最高裁判所第二小法廷 昭和63年(し)78号 決定 1991年1月25日
主文
本件再審請求事件の手続は、昭和六三年八月一〇日申立人の死亡により終了した。
理由
記録によれば、本件再審請求の対象となった有罪の確定判決は、南支派遣軍軍法会議が陸軍軍法会議法により昭和一九年七月二六日申立人に対して言い渡したものであるが、申立人は、昭和六〇年一〇月九日右確定判決を対象として、東京地方裁判所に対し、本件再審の請求をし、同裁判所は、昭和六二年三月二七日再審請求棄却の決定をしたため、申立人は、東京高等裁判所に対し、即時抗告の申立てをしたところ、同裁判所は、昭和六三年八月三日即時抗告棄却の決定をし、右決定の謄本は、同月六日申立人に送達されたこと、申立人の弁護人倉田哲治外二名は、同日当裁判所に対し、旧刑訴法四六九条三号による即時抗告の申立てをし、さらに、同庭山正一郎は、同月九日刑訴応急措置法一八条による特別抗告の申立てをしたところ、申立人は、同月一〇日死亡したこと、申立人の妻及び長女は、同年一二月一七日「訴訟手続受継申立書」と題する書面をもって、本件再審請求事件を承継する旨の申立てをしたことが明らかである。
右の事実によれば、本件再審請求の対象となった確定判決は、南支派遣軍軍法会議が陸軍軍法会議法により昭和一九年七月二六日言い渡したものであるから、本件再審請求事件については、刑訴法施行法二条により、旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用されるところ(最高裁昭和三七年(し)第一一号同三七年一〇月三〇日大法廷決定・刑集一六巻一〇号一四六七頁、同昭和六一(す)第四四号同六三年四月一二日第二小法廷決定・刑集四二巻四号七四五頁参照)、申立人は、昭和六三年八月一〇日死亡しており、旧刑訴法及び刑訴応急措置法には、右のような場合、申立人の親族らに対し、申立人の再審請求権者たる地位の承継を認める規定はないから、本件再審請求事件の手続は、申立人の死亡により終了したものといわなければならない。
以上の次第で、本件再審請求事件の手続は、申立人の死亡により終了したのであるが、申立人の妻らは、申立人の再審請求権者たる地位を承継したとして審議の続行を求めるので、決定をもってその趣旨を明らかにすることとする。
(裁判長裁判官香川保一 裁判官藤島昭 裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平)